虚証
『黄帝内経』通評虚実論篇第28に”精気奪則虚”(精気が奪われれば虚となる)とあるように、身体の精気が奪われたときに現われる症状を「虚証」と呼んでいる。また虚証になる原因には、慢性病・虚弱・老倦(ろうけん)iなどによる五臓虚損があるため「虚労」ともいう。
i.老倦…老神過多(考え過ぎなどの精神疲労)、労力過多(労働の過剰)、房事過多(性行為の過剰)
『黄帝内経素問』六節蔵象論篇第9に「その年の六気の運び、節気の盛衰、虚実をしらない医者は不十分である」との記述がある。つまり歳月が流れる年をとるに従って、身体の気が衰弱し、虚証が起こることを医者がしるべきであるという意味である。したがって虚証は加齢と関係が深いのである。
中医学の整体観念からみると健康な顔色、明瞭な声、元気な精神状態はみな自然界の臊気(脂くさい)・焦気・香気・腥気(なまぐさい)・腐気の五気によって奪われ、酸・苦・甘・辛・鹹の五味によって補われているのである。五気は鼻から心肺に入り、五味は口から胃腸に入る。その五気と五味の相乗効果により、身体の気・津液・神が生成され、臓腑の働きが正常に保たれ、健康で強壮な身体となるのである。
『諸病源候論』虚労病諸候篇に、心・肝・肺・脾・腎の五労、気極・血極・筋極・骨極・筋肉極(肌肉極)・精極の六極、七傷についてかいている。
傷脾(食べすぎて脾を傷める)
傷肝(大怒によって肝を傷める)
傷腎(力を使いすぎたり湿気の多いところに長時間座りこんだりして腎を痛める)
傷肺(身体の冷えおよび冷たいものの飲みすぎにより肺を傷める)
傷心(憂や心配や思い込みなどの感情で心を傷める)
風寒暑気によって身体の形体を傷める
恐怖によって意思を傷める
よくみられる「虚証」は気虚証・血虚証・陽虚証・陰虚証の4種類に分けられている。
補気健脾…気をおぎなって脾を健やかに。
健脾益気…気を巡らせて脾を健やかに。
気の種類
①基本の気は4種類。基本の気から臓腑の気、経絡の気を形成し、その基になる。
◎元気…別名は”原気””真気”。もっとも基本的で重要な気であり、生命の原動力である。生まれつき腎の精気から生成するものであるが、うまれてからは脾胃の水穀精微からも補われている。元気は腎から出て三焦を通じて臓腑・筋肉・皮膚などに分布している。
◎宗気…別名は”大気”。脾気が脾胃の働きによって、食べ物から生成した水穀精微を上昇させ肺に運んでいく。水穀精微は肺の呼吸運動により吸収された新鮮な空気と合わさって宗気を生成し、膻中(両乳首の真ん中)に集まり、咽喉・肺・心・丹田(へそ下1.5寸)、足陽明胃経を通して足まで走る。
◎営気…別名は”栄気””営気””営陰”。水穀精微から生成される。水穀精微の中の精微物質が血脈に分布し、血液の一部分となり、血流とともに全身に流れ、五臓六腑を営養し、調和する。
◎衛気…別名は”衛陽”。主に水穀精微から生成される。水穀精微の活力が旺盛な部分は腎気の気化作用により衛気に変化し、肺の宣発作用によって体表・臓腑・全身に巡っている。
腎は気の素、脾胃は気がつくられる現場、肺は気をつくる司令官。
今日の一品~炒り大豆カレー~

気を補い胃を強化するカレー。気を補ううるち米と一緒にカレーライスで食べるとますます胃が元気になって、ますますごはんがおいしくなりそう。
大豆(平/甘/脾胃大腸/祛湿類)
じゃがいも(平/甘/胃・大腸/補気類)
あらめ(寒/鹹/肝・胃・腎/化痰類)
玉ねぎ(温/辛・甘/脾胃・肺・心/理気類)
酒粕、味噌、カレー粉、きび糖、塩
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